テスト自動化とSeleniumのコミュニティがどのように日本に普及したか

2019/12/02
Selenium ロゴ

※この記事はSelenium/Appium Advent Calendar 2019の2日目の記事です。

こんにちは。TRIDENT CEO(兼エンジニア)の伊藤です。

先日楽天テクノロジー & イノベーションアワード2019の授賞式で、日本にテスト自動化とSeleniumのコミュニティを普及させるために、私がやってきたこと・やっていることについてお話させていただく機会がありました。今日はそのスライドの内容を紹介したいと思います。

Seleniumコミュニティの誕生

私が日本Seleniumユーザーコミュニティを設立したのは2013年のことです。

当時はテスト自動化に取り組んでいる企業は今よりずっと少なく、Seleniumを使ったテスト自動化の会社をやっていた私としては、何とかしてこの技術を普及させる必要がありました。

設立といってもGoogle Groupを作って「できました!」と宣言しただけで、本当にメンバーが集まるのかドキドキでしたが、知り合いなどの口コミで50人くらいの方が参加してくれました。さらに幸運にもITPro(現日経 x TECH)で記事にしていただき、メンバーはすぐに100人に増えました。

Groupを作ったものの何を書き込めばいいかよく分からないので、とりあえず自己紹介や参考記事の紹介などを投稿していました。しばらくするとSeleniumに関する質問が来るようになり、最初の頃は誰も回答などしないので、私が仕事の合間に調べては回答していました。

イベントを主催するのは苦手だし労力もかかるので、しばらくはGoogle Groupメインで頑張ろうと思っていたのですが、話を聞きつけたSauceLabsの当時のCEOが、「Seleniumのコミッターを派遣するからイベントやろうぜ!」と提案してくれました。しかも、コミッターというから誰かと思えば、初代Selenium作者のJason Hugginsだと言います。英会話は当時あまりできなかったのですが、このチャンスを逃す手はありません。

こうして第1回の勉強会がいきなり大物ゲストを迎えて開催されました。オバマケアのトラブルで来日が延期になったりと開催まで色々大変だったんですが、勉強会は盛況で、Publickeyで記事にもしてもらえました。

Jasonさんは、日本にSeleniumのコミュニティができたことをとても喜んでくれました。「グローバルのSeleniumカンファレンスをいつか日本でやれたらいいな」とも言っていましたが、「いくら何でもそれは夢物語だろう」と思いました。リーダーの自分に英語力が足りなかったし、何より日本にはSeleniumユーザーがまだまだ少なかったのです。

第1回の勉強会では発表者を探してくるのも一苦労でした。

しかしその後は、コミュニティのおかげかは不明ですが、Seleniumを活用する企業が少しずつ増え、色々な企業の方に発表してもらえるようになりました。

コミュニティのメンバーも着実に増加し、運営は順風満帆のように思えました。

Seleniumカンファレンス東京

ある日のこと、コミュニティのGoogle Groupに海外からの書き込みが投稿されました。Elemental Selenium で有名になった1 Dave Haeffnerからの投稿で、グローバルのSeleniumカンファレンスを東京でやりたいのだと言います。誰がやるかって?もちろん日本のコミュニティのメンバーです。

さすがにこれは厳しいと思いました。国際カンファレンス運営の経験が無いのはもちろんのこと、この数年のテスト自動化の広がりを加味しても、海外のように500人以上の参加者と多数のスポンサー企業を集めることは不可能に思えました2 。加えて、赤字になった場合の負担は日本側(!)ということも大きな問題でした。

結局この話は半年以上宙に浮いたままだったのですが、話を聞いたASTERの方達が資金面をサポートすると言ってくれたため、計画が動き出します。

ともかくも赤字にしないことが重要だったので、会場費も運営費も抑え、通訳は精度は落ちるがリアルタイム機械翻訳のツールを利用、みたいな計画を立てました。黒字ラインの参加者数は200人(それでも宣伝はものすごく頑張る前提)3 、スポンサー数もかなり控え目に目標設定しました。

この計画でも、本当にうまくいくのかは誰にも予想できませんでした。が、蓋を開けてみると、予想を大きく超えるスポンサーが集まり、集客も好調で、最終的に参加者数は430人になりました4 。コミュニティができてから6年の間に、いつのまにか国内のSeleniumのユーザー数は大きく拡大していたのです。長い時間をかけてまいた種が、収穫の時を迎えたようでした。

収支が改善したため、全セッションに人間の通訳をつけ、ノベリティ配布、サテライト会場への配信に、コーヒーとお菓子付きの交流スペースまで設置することができました。後付けで規模が拡大した結果、運営はいろいろ死にそうでしたが、運営メンバーの活躍で、カンファレンスは大成功だったと思います。

Seleniumカンファレンスの後は、英語力が上達したこともあり、国際カンファレンスでも講演をする機会が増えました。5

ちなみに英語力については、カンファレンス等で必要に迫られ毎日Skype英会話を受けていたのと、TRIDENT社内SlackとGitHubの読み書き言語を、CEO特権で全員英語に統一したのが効果がありました。毎日英文を書くだけでも、英会話の際に英語の文章がスムーズに出てくる感じがします。ヒアリング力はもっと向上させたいのですが、英会話の先生に聞いても「リスニング教材やるのがいいんじゃない」と言われるし、色々試しましたが結局地道に通勤時にTEDとか聞いてます。

Next my challenge

TRIDENTはもともとテスト自動化のコンサルティングやスクリプト作成受託をメインにやっていたのですが、最近はそちらの仕事はやめてAI自動テストツールMagic Podの開発/運営に一本化しています(そのバックエンドでは、もちろんSeleniumやAppiumが活躍しています)。Selenium/Appiumは素晴らしいツールですが、それだけでは解決できない課題がまだまだたくさんあると思うのです。

一般的なユーザーとは違う使い方ですが、Selenium/Appiumは相変わらず毎日触っています。コミュニティへの貢献は、これからも続けていきたいと思っています。

注釈・出典
  1. と私は思っている []
  2. 過去実績では、どの国で開催されたSeleniumカンファレンスでも参加者の大半は国内からでした。 []
  3. 実際にはその後にとった事前アンケートでカンファレンスに「参加したい」と答えてくれた方が100人くらいいたので、100人まではいけそうな雰囲気はありました。 []
  4. 国内集客がうまくいったのと、海外から思ったよりもずっと多くの方が来てくれたのが理由です。 []
  5. この英語力で講演するのは結構無理があるのでは?と感じることはまだありますが。。 []

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